小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

あり得ること

今日は一日さんざんな目にあい、仕事が忙しく、部署全体がひっくり返したような大騒ぎ。

就業時間後にようやく電話が鳴りやんで、少し静かになったフロアで残業。なんとか、仕事の終わりが見えるくらいになったので、帰途に着いた。

家に一番近い駅でKと電話で話す。

「とんかつがいいな」
いいよ、とんかつね。
「ビールも」

ビールを買うためには別の店に寄らなきゃならないだろ、残業で疲れてるんだよ…。

一瞬、いらっとしたが、わたしがKによくそういうことを頼むし、Kも仕事の山を一つ越えたんだからビールくらい飲みたいだろう。ここでにっこりと買って帰るのが恋人として自分の倫理観に沿っている行為だろう。

まあ、倫理観とかくそくらえですが。

それでも、リュックサックのひもからビールの重さを感じながら、くっそー、とちょっと思いつつ、自分の前の自転車が信号無視をして交差点を横切っていくのを見ていた。

ここでわたしが交通事故にあったら、唐突にわたしがいなくなってしまった残りの人生をKは「あの時、自分がビールを買ってと頼まなかったら、あのタイミングであの交差点を横切らず、命を落とすこともなかったのでは」と、とんかつとキャベツとビールが散らばるなか横たわるわたしの残像に涙を流すだろう。信号は守って渡ろう。

でも、信号を守っても、信号無視の自動車が突っ込んで来たりしてね。

と、いつもならEZのスタートトルクにものを言わせて、びゅーんと横切るのだが、ゆるゆると漕ぎ始めた。

そのとき、わたしの目の前を信号無視の車が突っ切っていった。