小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

流せない涙

「この子と離れ離れにされるのだけはイヤです。それだけは絶対にイヤ」

そう静かに言ってはじめて涙をほろほろと流した女性。つらい経験を話すときも絶対に泣かなかった彼女が初めて泣いた。

それを見て、わたしにはこういう種類の涙はないな、と感じた。まあ、そういう意味では欠陥を抱えた人間だから仕方がない。

性神話も三歳児神話も信じていない。でも、こういうのっていいな、と彼女を見て思った。そう思う自分に、実は自分が母親として欠陥品だったと考えそのことに深く傷ついていたことに気がついた。

でも、いいじゃん。それを他人と比べるからそういう風に感じるんだ。自分の大事なものでもあっさりと手を離すことができることがわたしの特技ではないか。

そうやって自由に向けて放せる手を持っていてもいい。