小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

メトリックス論

老教授はプロジェクターで映し出された図をおもむろに指差して、これがバイオメトリックスで、今まで発見されたふたつのメトリックス、フィジオメトリックスとエレクトロメトリックスに次ぐ最後のメトリックスだと考えられてきた、と重々しく話した。世界をつかさどるのはこの三つのメトリックスであり、そのメトリックスから発せられるエネルギーで世界は循環を繰り返している。その循環は俯瞰的視点から見ると循環であるが、しかしながら側面図を描くとこれがサインコサインタンジェントなんだよ、これが。と、急に口調が軽くなった。ここは笑い処なのだろうと思って笑ってみたのだが、誰一人笑わない。隣に座っているKはしかめっ面をした。笑うなここは大事なんだよサインコサインタンジェントが計算できない君には把握できない深遠な運動方程式による世界の仕組みが解き明かされようとしてるのがわからないのか。

しかしながら第四のメトリックスが見つかり、世界はエネルギーの循環をしているだけではなく新たに生み出していることが証明されたのであります。これはエネルギー保存の法則で世界が説明されえるものではないというエナジーイコールエムシースクエアという美しい方程式に対する挑戦であります。

このメトリックスにはこの生物が住んでいると想像されております。そして、この生物が胸元に痒みを覚えぼりぼりと掻きますと、そこから卵が生まれ出るのです。このようにして新しいエネルギーが世界に供給され続けているのであります。わたくしはこれをエグメトリアと名づけました。

・・・ちょっと待て、メトリックス(そもそもそれが一体なんなのかもわからんが)の話なのに、なんでこれだけいきなりメトリアなんだ。だいたい、このふざけた図はなんだ。それ以上に胸元が痒くなって掻いたらそこから卵が生まれるなんてそんなくだらん話、だれが信じるんだ。

そう思ったわたしの心の声が聞こえたらしく、隣に座っていたKがわたしの耳元でささやいた。

あのね、世の中の真実のほとんどって見かけはくだらない姿をしているんだよ。




Kとごちゃごちゃあったこの週末の真っ只中に見た夢です。Kの言葉が啓示となり、自分に見えていなかったものが見えてきました。

よく覚えていないんだけど、確か、上から見ていると循環しているように見えるエネルギーは横からみると波形を描いていて、そのふたつのことを考え合わせるとエネルギーは緩やかならせん状になって上昇をし続けているらしい。その上昇のエネルギーの出所を示せなかったのがメトリックス論の弱点だった、とかいうんじゃなかったかな。この謎生物が胸元の痒いパッチから生み出す卵がエネルギーの上昇を生み出す新たなエネルギーソースであるとか、そんな感じのお話でした。

もちろん、すべてわたしの脳がどこからかひねり出してきた嘘理論です。