小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

Beautiful and Useful

欲しいものがないといっておいてなんだけど、最近のわたしは物欲まみれっぽい。ちょっとしたストレスがあるのでその解消としてついついお金を使ってしまっているのは自覚してるんだけど。

ただ、ずっとこういうものを探していて見つけたのでKとも相談して買いました。




イギリス製のアンティークの引き出しです。大きさは30cmx30cmx25cmくらい。取っ手のデザインや角の継ぎ目の作り方、そして引き出しの中に張られた布の模様から見ると19世紀後半のものだと思われます。たぶん1880年代くらい。Arts and Craft Movementの初期のものだと思われます。

シンプルで美しくかつ機能的。


鍵がかかるようになっています。引き出しそのものに鍵がついていることは多いのですが、こういう風に引き出し全体に鍵がかかるようになっているデザインはけっこう珍しいです。そして、鍵がちゃんと使えるものも珍しいのです(たいていは鍵がなくなっている)。


鍵を開けると引き出しも開けることができます。

今回、この引き出しを買って気がついたことがふたつ。



まず、一つ目。

どんなものを持っているかで自分のアイデンティティーを社会的に確立しようとするのが消費文化です。例えば、ジーンズはリーバイスしか穿かないとか、シャネルのバッグしか使わないとか、時計は絶対オメガとか。

でも、わたしはそういうものに興味がないのです。この引き出しを買ってその理由がわかりました。

というのも、どんなに高いブランド品を買ったとしても、個人の特注のものでない限り世の中にそれはかなりの数存在するのです。自分だけが持っているということがありえない。で、自分しかもっていない特注品やでっかい宝石を買うほどの財力はない。そしてほかの人が持っているようなものは持ちたくない、という自己顕示欲ですね。うん。

が、アンティークの家具は違います。基本的にすべてが一品物です。同じようなものがあったとしても決して同じではない。この引き出しを持っているのは世界にわたし一人なんです。どうよ、この満足感。

しかも、アンティークの家具というのは美しいし毎日使えるものです。使わないバッグや靴を山のようにベッドルームに持っているよりも、財布やピアスを入れて毎日使う引き出しがある生活をわたしは自分の理想としています。…とかいっちゃって、自分語りをして酔えちゃうあたりもアンティークの家具が好きな要因ですね。

しかも、アンティークってちょっとした知識が必要で、それをひけらかすことで自己満悦も味わえる。

これらの理由からわたしは自分という個性を表現するものとしてアンティークの家具(ことに椅子と引き出し)を利用してるんでしょう。うん。



そしてふたつ目。

アンティークには定価とかメーカー希望小売価格とかありません。まあ、あちらこちらに出入りをしていろいろと買ったりしているうちに大体の値段の見当はつくようになるのですが。それでも、見当がつく最低価格と最高価格は2倍から3倍の隔たりがあります。だからお店で買うときには傷やゆがみを指摘したりして適切な交渉をして買います。

今回、この引き出しは某ネットオークションで買いました。ネットオークションの経験は今までに3回しかないんだけど、その経験から今回はわたしは二回入札しました。終わる1日前くらいに自分がディーラーだったらこの値段で買えば利益が出るなと思える値段。そして終わる1分前くらいに店で客として買うのであればいくらが上限かの値段。

今回はもうひとり、どうしてもこの引き出しが欲しいと思っている人がいて、その人がどのくらいだったら出すかなーと予想をして、それを上回る額を入札してまで欲しいのか、と考えていました。また、もし相手がそれ以上を出してきた場合にはあきらめられるのか。

結局、わたしの読みは今回は正しくて、終了間際の小競り合いで勝ったんです。

この予想して賭けるというどきどき感と自分が落札できるかどうかという緊張感、そして実際に落札できたときの達成感って気持ちいいですね。しかも無駄に値段を吊り上げることなく落札できたので自己満足もあります。

終了間際の入札合戦の時にはアドレナリンがまわっちゃってくらくらでした。

こういう興奮って普通の買い物では味わえないです。なので、オークション中毒になっちゃう人がいるって理解できるなーと思いました。


eiの欲望の軌跡。You are the winnerっていわれるのもうれしい。人生に勝った、みたいな錯覚まで起こしちゃうよ。