小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

太文字

Kがやけにモフモフとした大きい八割れ猫をひょいと差し出しつつ、

「この猫、肉球の裏に怪我してて、その怪我がちょうど太文字と同じ幅だから、太文字って名前だよ」

と言った。

ぐるぐると黄色い瞳を回しながら、太文字は「ぬー」と鳴いた。毛がくるくるとカールしていて、髭もくるくるで、コーニッシュレックスなのかな、しかしその割には体がふとましく手足が太い。

居間のど真ん中に水道の蛇口を設置したKは、太文字を居間の真ん中でごしごしと洗い出した。太文字は、ぬーと鳴きながら洗われるままに洗われている。洗うと猫は細くなるものだが、太文字の毛はカールがよりくるくるして濡れれば濡れるほどもっふりしていく。

本棚には木くずが詰め込まれて、天竺鼠が固まりになっている。

床の上には、綿埃がそこここで丸くなっている。また猫毛掃除の日々が始まるのか…とちょっとうんざりしつつ、Kは動物のいる日々が好きなのかな、とカーテンの上にとまって踊り狂っているおかめインコを捕まえながら考えていた。

おかめインコは「ぴるるんぴるるん」「ぶーぶーぶー」とうるさく泣き続ける。どうやったら止まるのかな、と手に持ったおかめインコをしみじみと見ると、それは自分のスマホの目覚ましが鳴っていた、という。



猫がいないと綿埃とかほんと少ない。あの小さい体であんなにたくさんの埃を製造していたとは。おかめ、すごいな。

そして、夢の中なれど、ふとましい八割れ猫に太文字と名付けるとは、Kのセンス、侮りがたし。