小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

ぶーぶーちゃん

この部屋に引っ越してきてから一日に一度か二度くらい謎の音が聞こえてくることがあった。ほぼ毎日、夕方から夜に

ブーブー

と聞こえてくる。ブーが二回のときが一番多くて、たまにブーが三回四回となることもあるけれど。とにかく、毎日ブーと聞こえてくる。はじめはどこかの部屋で何か大きな装置を動かしていてその振動が音の原因かと思っていた。

しかし、このアパートは築年数こそ古いものの防音はかなりいいのだ。下の子供達が大騒ぎを演じていることに床の揺れで気がついても、窓を閉めていれば声も聞こえず足音も聞こえない。なのに、ブーは聞こえてくる。

Kとふたりでこの音はいったいなんだろう、不思議だ、不思議だ、といい続けて半年。夏になり窓を開けるようになったらブーはさらにはっきりと聞こえてくるようになった。はっきり聞こえてきてわかったのは、それは誰かが鼻をかむ音である、ということだ。どこからなのかはもちろんわからない。でも、音の種類がわかったのがうれしくてKに報告をした。

「どんだけでっかい鼻の穴なんだろうねえ、ブーちゃん! ぶもーんぶもーん」

などと大変に失礼なことをいうわたしをKはやんわりとたしなめてくれた。

8月も終わりに近づいたころ、涼風も立ち新型インフルエンザも流行り始めた。わたしは静かに試験勉強の丸暗記をしていた。そうしたらその日に限っていつもは夕方しか聞こえてこないブーちゃんが一日中聞こえてくる。時折、ゲホっという新しい効果音まで添えて。

ブーちゃん、鼻炎やろか、風邪やろか。それとももしかして新型インフルエンザかのう。ブーちゃん、だいじょうぶやろか。

と、いらぬ心配をKに話して聞かせたら、鼻をかむ音でここまで楽しんでいる人がいるって本人は知らないんだろうねえ、と笑っていた。



試験勉強のため余り更新ができませんでした。とにかく集中して勉強をした二ヶ月でした。さあ、これからもうひとつ資格試験に挑戦です。がんばるぞ〜。