小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

最近うれしかったこと

今までに、たぶん、何度かOpenly Gayという状態がわたしの理想の状態だと書いたと思う。書いてなかったかな。カミングアウトという形で、自分が恣意的に選んだ人にだけ打ち明ける(=秘密の共有を強制する)ことを必要としないあり方。宣伝もしない、隠しもしない。ただ、常にそうあるだけ。

3年ほど前、二人でリゾートマンションを買った。週末の良い息抜きになっている。当たり前だけど、そこでは二人でいつも一緒に行動をしていて、でも二人の関係がなんだとかかんだとか、不動産屋や管理人さんや運転手さんやほかの住人には言わないまま過ごしている。

周囲は、友達?姉妹?親戚?あら?…みたいな感じで勝手に解釈をしている。

わりと親しくしていただいている年配の女性の機子(仮名)には、わたしをはじめてお茶に呼んでくれた時にKも連れて行きます、と話した。特に関係も説明せずに。そこで、二人の出会いやら一緒に暮らしていることなんかを話し、「ソウルメイト」というあいまいな結論に落ち着いたらしい。

それから、Kの両親が遊びに来ていたり、Kの友人が遊びに来ていたりした時に紹介をしたりしていた。また、部屋に呼んだ時の暮らしぶり、二人でぶらぶらしていたりする際の距離の近さなんかも見ていたんだと思う。一緒にマンションの自主活動に参加しているときのKの発言の聡明さや、わたしの発言のずれ具合やとんでもなさ、それをうまくエネルギーにナビゲートしていくK、そういう二人の関係を静かに見ていたのだと思う。

先日、花火を見ながら、おいしいご飯をたくさん食べ(わたしが作ったローストビーフもいつにもまして最高の出来でした)、ワインもたくさん呑んで。

その時に、彼女が「男とか女とか関係ないわよね。やっぱり二人の相性っていうか、お互いがお互いを支えられる関係よね」と言っていた。

彼女の旦那さんも、「一方が突っ走ったら、片方がそれを上手に抑えることが大事でね。あなたと僕は似ているよね」とKに言っていた。

なんというか、偉そうなんだけど、その時は「あー、二人の関係について正解したねー」と上から目線で思っていた。

でも、いま、こうやって文章に書いていると、実はとてもうれしかったんだとわかった。隠さない、宣伝もしない、とか言いつつ、やっぱり日本の同性愛者への偏見の深さを知っているだけにびくびくしていたんだと思う。

だから、ああいう形でさらりと知っていることを伝えてもらえてうれしかった。

彼女たちも、わたしたちをどう受け入れるかで悩んだのかもしれない(悩まなかったかもしれない)。そして、特に詳しく聞かなくてもよいという結論にたどり着き、大げさではなく緩やかにそれを伝える方法を探していたのかもしれない。

わたしは、今後もこのことについて彼女とその旦那さんに何かを明言することはないと思う。ただ、わたしたちのことを問い詰めず定義せず、そういうものとして受け入れてもらえた感謝は常に忘れないようにしようと思う。

その感謝の表現の仕方については、今のところわからないままだけど。

そんで、Kと機子の旦那さんの間になにやらよくわからん共感が生まれていることに、ひそかにむかついていたり。悪いけど、わたしも機子もあなたたちが思うほどトンでもではありませんことよ。聡明でかしこく行動力があると言ってほしいわ。まったく。



<追記 22:45>
関係を受け入れてもらえたことを感謝する、という表現に「やっぱり同性愛者って自分で卑下してるんでは?」と思われるかもしれない。そうかもしれない。少なくともわたしの中には「多数派ではない」という意識はある。

目に見える少数派(移民)としてかなり長く過ごしてきた経験から、「(多数派に)受け入れてもらえる」というのはなかなか無い経験だとわたしは知っている。受け入れないで数の力を使って差別をしてバカにしてという楽な方向に流されないこと、物珍しさから質問をしまくるという一見受け入れているように見えて実は差別的な行動を取らないことのむずかしさをわたしは知っている。

受け入れない行動をとる人については、まあ、あきらめていた。言論やら信教の自由やら思想の自由があるしな。質問してくる人については、赤裸々に答えることにしていた。例えば、わたしが親と交流を持たないことについて批判的に質問をしてくる人に対して。後者に対してのほうが攻撃的で、扱いが平等ではないあたりが可笑しいけど。

とりあえず、こういった経験を踏まえて、自分の行動に対しては常にリフレクティブに見ていたいと思う。反省点も多くて嫌になるけど。

そして、わたしの少数派の部分に関して、差別的な行動をしない選択肢を選んでもらえたこと、質問をしないことにしてもらえたこと、つまりわたしをその人と同等の人間として扱ってもらえたことについては、やはり、感謝しかない。


<追記 23:00>
Kが肝心なことを書いてないと怒るので、書きます。はっきり言って眠剤が効きつつある今しか書けない。

機子の旦那さんは、「機子に出会うまで、僕は人生ってこんなものかとあまり興味がなかったんだけど、機子にあってから人生に興味が出た」と言っていたそうです。そんで、Kも「あ、おれもおれも。おれだよ、おれだよ、おれもだよ」とおれおれ詐欺っぽかったらしい。

そんなところでも、共感している機子旦那とKでした。