小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

猫は待つのか

おかめはもう18歳半。目も見えなくなり、腎機能も低下、便秘も悪化。高血圧。性格も悪い。ほぼ毎日皮下点滴をし、お高い療養食を食べ、月の医療費がものすごい額になっている。その額たるや、獣医がおまけの扇子をその商品を利用したわけでもないのに、駐車場まで追いかけて持ってきてくれるくらい。

たぶん、認知症もあるのだと思う。夜中にワーワー鳴いたり、意味もなく家の中を徘徊したりしている。

わたしのことだって、きっとわかっていないだろうと思う。あんまりやさしくもできてないし。でも、Kはやさしくて、いつでも丁寧に見てくれて、便秘も神の手の腸マッサージで出してくれるし、大好きなんだろうなと思う。

そんなわたしが入院をした。


ここしばらく、夜に急にへそ周りが痛くなったり、うんこが赤かったり、食欲があんまりなかったり、体がだるかったりしていた。うんこが赤いのは、お昼の野菜ジュースのせいかな、と思っていた。血便は黒い、または鮮血がびしゃっとなると思っていたので、うんこ全体が赤くなるのは違うだろ、と。

先週の木曜日、その日はKが非常に遅くなる日だった。一人でご飯を食べて2時間刑事ドラマを見ようかな、と思っていた時に突然それは来た。

いつもの迷走神経反射だと思った。おなかが痛い、冷や汗が出る、吐き気、下痢。Kがいないときになるなんて、と思いつつ、一人でトイレに入り、買いたてのトイレットペーパーの袋を便器の前にセット。脳貧血状態で気持ちが悪くなることはわかっているので体を支えるため。16個入りをKが買ってくれていてよかった。

でも、いつもと違って、床に汗が滴って汗だまりができるほどの冷や汗も腹痛もいつものよりもかなりひどい。1時間くらいトイレの中で苦しんで、ドラマでは3人くらい殺されている声がして、「大丈夫、迷走神経反射では死なない。死なない。迷走神経反射は過ぎるのを待つしかできない」と自分に繰りかえしていた。

いったん収まったのに、再び襲ってくる腹痛。今度は猛烈な吐き気。とにかく冷や汗対策にタオルを持ってトイレに再びこもる。外から聞こえてくる足音。しかし、それは隣の部屋に入っていく。Kじゃなかった、と絶望に浸りつつ、でもKがいても何ができるわけじゃなし。がんばれ、がんばれ、と自分を励まし。

戦い始めて2時間。テレビでは犯人も告白してなんだかいい風に刑事ドラマは終結していて、わたしの迷走神経反射も終結かな、と思った。汗が酷くて髪の毛もびっしょり濡れたので、さっとシャワーを浴びる。そのまま布団に入る。腹痛が治まらないのがいつもと違うな、とのんきに考えていた。

しばらくしてKが帰ってきてくれて、安心して睡眠薬を飲んで寝たけど、朝3時に再び腹痛の嵐。吐き気。腸液吐いて、腸液出して、血が出てました。その段階でようやくこれはおかしいと気が付きました。病院に行ったほうがいいだろう。しかし、タクシーに乗って病院に行く状態に自分が無いこともわかる。

Kに救急車を呼ぶようにお願いし、人生初の救急搬送をされました。結果、感染性ではない胃腸炎。点滴で3日絶食、5日入院しました。今まで胃腸の強さには自信があったのにこんなことになるなんて。今でも腸が動いておなかが痛くなるのがトラウマ。感染性ではないということは、わたしの台所の衛生管理に責任がなかった、ということで安心した面もあります。診断時に医師が、小さな声で「がん…」と言ったあと、「ポリープかストレス性の炎症かな〜」と大きな声で言って、最後にまた小さな声で「ぢ、かもね、ふふ」と言ったのには、なんかいらっと来たり。CTの検査技師や新人看護師の静脈確保が下手で、腕が青あざだらけになったり。そんなイベントフルな5日間を過ごしました。

一方、夜中になんかしらんが苦しむ声が聞こえて、どやどやと人が来て、わいわい騒いで、そして誰もいなくなった。おかめ視点だとこうなるんだろうと思います。

わたしを入院させて、Kなりに修羅場がひと段落した後、おかめからそういう文句を言われたとか。そして、「そのあと(おかめのために出しっぱなしにしてある)こたつに入らなくなっちゃったんだよね」とKが言っていました。玄関よりのダイニングにずっといてリビングに入ってこなくなってしまったとか。

本日、めでたく退院し帰ってきて、おかめを抱っこして撫でてあげたり一緒に昼寝をしたりしていたら。

すすっとこたつに入っていきました。

もしかしたら、ダイニングでわたしを待っていたのかな、と。わたしが帰ってきて安心していつもの定位置に戻ったのかな。

が、わたしが家に帰ってきたときには、ちょうど餌を食べようとしていた時で、撫でると「うがあ」って文句を言ってたんだよな。やっぱり、待っていたわけではないのかな。

猫だし。

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ここしばらく、逆流性食道炎になって胃カメラ飲んだり、今回の胃腸炎ではまだ内視鏡検査をしなきゃいけなくて。やっぱり、年を取ってるなと感じる今日この頃。このわたしの数倍の速さで年を取っていくおかめ。そんな、年を取るパートナーと猫の看病に追われるK。

今回のことでは本当にKに迷惑をかけてしまいました。ほんと、緊急時には頼りになるし、お見舞いにも来てくれて、ありがたかったです。南無南無。