小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

靴を買った。

わたしの足は甲高幅広で、最近流行の先っぽが刺さりそうにとんがっている靴は履けない。また、ハイヒールなどの女性のおしゃれ靴は靴底が薄すぎて、あれでは裸足でアスファルトの上を歩いているようだ、とも思う。

わたしの足を無理なく納めることができて、なおかつ靴底がしっかりと分厚くて、ジーンズにもスーツにも似合う靴、というわたしの望みをかなえてくれる靴のメーカーがひとつある。ここ15年くらいはそこの靴がわたしのメインの靴になっている。

しかし、困ったことに、そのメーカーの靴は日本では発売されておらず、ネット通販もあまりされていない。5年前に買った靴は靴底がへたれてしまったので修理をしようかと思うのだが、この製法の靴は靴底が張りかえられません、といわれてしまった。

あちらこちらを探して、やっとその靴を売っているサイトを見つけて早速注文をした。

履き心地もよく、今回のデザインは靴底の修理もできるタイプのようでうれしく思いながら、玄関で靴にオイルを塗っていた。

そうしたら、玄関の扉の外でかさかさ・・・と音がする。なんだろう、と思っていたら、しばらくかさかさした後に、小さく

「ちゅん」

と鳴く声がしてすずめが飛び立っていく音がした。

ここ数日、玄関の外に鳥の糞が落ちていたのだが、どうもすずめがうちの玄関のあたりでなにかをしているようだ。同じ玄関が並ぶ集合住宅の廊下で、なぜうちの玄関だけがそんなに気に入っているのか不思議だ。

玄関の前でかさかさしているときには声を押し殺すようにして静かになにかをしているのに、飛び立つときにはこらえきれずに

「ちゅん」

と一声鳴いてしまう様子がほほえましくて、ひそやかな音を聞きながら靴を磨いていた。