小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

夢叶う

「夢は追い続けていればいつか必ずかなうものだ」…いや、「夢は見続けていれば…」だったか。立松和平の「海のいのち」に出てくる言葉だ。もちろん、国語の教科書で読んだ。がむしゃらに夢に向けて頑張る必要はない、毎日を淡々と生きていくことが大事だ、と勝手に解釈をした。そうすれば、気が付くと自分が立ちたかった場所にいつの間にか着いている。でも、その瞬間は祝祭的に訪れるのではなく、昨日の延長にある今日。その向こうに見えるのは、明日。大きく変わることはなにもない。ただ、気が付くと夢は昨日になっている。夢がかなう、というのはそういうことだ、と勝手に解釈した。

さて。

むかーしむかし、小説を書きたいと思ったことがあった。すごい昔。石器時代くらい。でも、自分にはひとつのテーマを中心に文章をまとめ上げる力、それは頭脳とかじゃなくもう腕力といってもいい、そんな力がないことに気が付いた。でも、編集さんから「初校」なんてハンコが押された原稿を受け取り、書き込まれた編集さんからのコメントに「うーん」なんてうなりながらペンのお尻で頭をカリカリ…なんてするかっこいい横顔を夢見ていた。ぼんやりと。

そしてある日。ふと気が付くと、自分の手に自分の名前が載った「初校」とハンコを押された原稿があった。そこにたどり着くまでは、校正の原稿の夢なんてすっかり忘れていて、ひとつのテーマに沿って矛盾なく、無駄なく、論理の破綻なく、文章をまとめ上げることに苦しんで苦しんで、疲れ果てて。

そんな日々に終わりが見えてきたとき、ふと気が付くと手の中に「初校」原稿があった。そうだ、これはわたしの夢だった。急に気が付いた。

こんなところで待っていたんだね。ありがとう。

そして、編集さんのコメントの有能さに脱帽しました。すごい。

さらに、わたしがいろいろと遅かったせいで、入稿が印刷スケジュールぎりぎりになって、みんなであせりまくる、というありがちな状況までついてきた。

夢がかなうのは、夢のために生きたからではないんだな。