小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

ペンの向こうの景色

扱っているケースが非常に微妙で判断が難しい問題であることに気がついた。自分ひとりで判断をするわけにはいかないので、ある程度の仮説を立てて上司に意見を聞きにいった。

上司はほっそりと背が高くいつもやさしく笑っていて、なかなか押しが弱い。しかし誰の話でも誠実に聞いてくれるため、みんなからの信頼は非常にあつい。また、大変にまじめでもある。この人、冗談言うのかね、とわたしは時々考えている。

わたしの立てた仮説でいいのではないか、といいつつもそれ以外の可能性も調べながら上司は考え込んでしまった。

考え込みながら、手にしたボールペンを親指を軸にくるっと回していた。

「うーん(くるっ)これは(くるっ)・・・こっちの例を元に考えても(くるっくるっ)、そうすると責任を負うことになるのは(くるっ)そこだとは(くるっ)思うけど(くるっ)」

わたしは中学校のころにペンをくるっと回せるようになりたいと思ったがすぐに練習に飽きてしまって、結局はまわせないままになっている。

考え考え、ほとんど無意識にペンをくるくると回している上司を見ながら、彼がまだ小学生ぐらいだったとき、やはり今と同じくらいのまじめさで真剣にペン回しを練習している様子は簡単に想像できた。同じようにまじめな髪形をして半ズボンを穿いている少年の彼を想像したら急に笑いがこみ上げてきた。