小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

海の見えるお墓

その日はとても暑い日だった。横浜のそごうでシャンペンのクォーターボトルを買い、シーバスで山下公園まで行った。桟橋から公園に歩くだけで汗が滴り落ちるほどだった。

あまりの暑さにタクシーでお墓まで行こうと思ったのだけれどタクシーが来ない。道端で待っているだけでも暑いし、お墓までの道のりは林の中の遊歩道を通っていくので涼しげに思えて歩くことにした。途中の自動販売機でスポーツ飲料を買ってKとかわるがわるに飲みながら階段を上っていった。

港の見える丘公園の展望台に立つと海からの風が涼しく気持ちがよかった。しばらくそこで風に吹かれてから、公園の水道でかわるがわる顔を洗った。顔を洗ったあとはちゃんと拭かないで濡れたままでいるとかなり涼しいとKが笑った。気化熱侮りがたし。

お墓の入り口の門を開け、バケツと柄杓を借りて水を汲んでお墓まで歩いていった。猫たちが木陰で寝ているけれどピクリとも動かない。全身で木陰から動きたくないのだから近づいてこないでくれと訴えている。

控えめな墓石は植えられた梅の木に隠れてしまっているので、失礼してお隣のお墓の縁石に足をかけさせてもらって、墓石に水をかけた。そのあとでシャンペンのコルクを抜いた。どんなに上手に抜いてもこの暑さの中を歩いて運んできたので噴出してしまうだろう…と思いながらコルクを開けた。しかし、意に反して音高くコルクを抜いたあともシャンペンは噴出さず、上手に開けることができた。これならば故人も合格をくれるだろうとすこし笑いたくなった。

墓石にシャンペンをかけたあと、瓶から直接飲んだ。夏の昼間の太陽の下でラッパ飲みをするモエシャンはさっぱりとおいしかった。



日本にいたときのことのメモ。

このあと、元町に向けてゆっくりと歩いていって、ルノアールでお茶をしました。カフェではなく、「喫茶室」という名前がぴったりのゆったりとしたお店でした。