木蓮が散った。
事業所の裏に小さな物置があって、その横に本当に小さな植え込みスペースがある。南側には大きなビルがあり、ほとんど陽が当たらないところ。そこに白木蓮がある。
4月の初めに小さな花芽をそれぞれの枝の先につけていた。とても小さな花芽で、陽も当たらず周りもコンクリートのこんな場所では木蓮も花が育たないのか、と思っていた。
けれども、温かくなるにしたがって花芽はぐんぐんと大きくなり、やがて大輪の木蓮になった。ふっくらと手を合わせているようなやさしい形の木蓮を毎日隣を通るたびに愛でていた。
ここ数日の荒れ模様の天気でその木蓮がはらはらと花びらを落としている。
思えば、去年の今頃、仕事を始めた時もこの木蓮は咲いていたはずだ。でも、新しい仕事に緊張していたわたしはこの木蓮に気が付いていなかった。
散りゆく木蓮を見ながら、もうすぐわたしはここの事業所を退職するんだ、と考えていた。最後に木蓮の花と過ごせてよかった。
5月からの職場ではどんな花が咲くのだろう。