小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

斜め45度上方をぼんやりと見据えながら

日本に引っ越して来てからもう1年以上がたって、切符の買い方だとか買い物の仕方だとかスーパー銭湯なんかにも慣れたのですが、なかなか慣れないものがあります。それは、町のビラ配り(ティッシュなんかも含む)への対応。

以前いた国x2は双方共に治安がいい地区でさらに田舎だったこともあって、道を歩いていて誰かと目があうとにっこりと笑う(make face)することが礼儀にかなった行為だったのです。しかも、ビラ配りなんて存在していませんでした。

日本の街を歩いていると、目があう人というのはビラ配り系の方々ばかり。ついつい習慣でにっこりと笑うと当たり前ですがビラを差し出されたり、商品の説明を聞いていけと誘われたり、焼き栗食えといわれたり、人力車に乗れと誘われたり。そのたびに、丁重に頭を下げてお断りしていました。無視すると悪いかなあと思って。

Kに言わせれば、無視すればいいし目を合わせなければいい、ということなのですが。それが難しいのです。街を歩くときに目があったときのとっさの対応っていうのは無意識のうちに習慣化されたものなんでしょう。

とにかく目を合わせなければいい、ということで、車を運転するときの前方を見る方法を採用して見ました。ある特定の対象に焦点を合わせるのではなく、ぼうっと前方を見るようにすると視界全体を見ることができる、というものです。忍術の本を読んでいてこういう方法を学びました。

しかし、車を運転しているときのように視線を水平に投げていると視界にこちらを注視する人が入ってくると自然にそこに焦点があってしまってにっこりしてしまいビラやティッシュを差し出され…となるのです。

なので、斜め45度上方に視線の中央を置くようにしてぼんやりと全体を見ながら歩くことにしました。

そうしたら誰からもビラもティッシュも渡されなくなりました。

鎌倉で車力に捕まって断りきれずに人力車に乗せられてしまい憮然とした顔のドイツ人の男性二人を見かけました。目があったので、にっこりしながら写真を撮りましょうかと話しかけると、一人は

「No...no...I don't want...」

とむすーっとしながら言っていました。もう一人はにっこりしながら

「Oh, that's may be a good idea!」

とか言うので写真を撮ってあげながら、こっちのにっこりおじさんはなれなれしく話しかけてくる車力についつい愛想よく笑いかけちゃって捕まったんだろうなあ、日本の観光案内にビラ配り系の人に捕まらないための「斜め45度上方ぼんやり見据え法」の解説を載せるといいのかも、と考えたりしていました。…わたしのような謎の通りすがりの東洋人からも写真撮ろうかとか声かけられちゃってるし。

しかし、わたしが声をかけられたりビラをもらわなくなったのは斜め上をぼうっと見ながら歩いている人が怖いだけだからかもしれません。いや、きっとそうなのだと思います。理由はともあれ、目的達成できたのでよしとしています。