小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

ななかまど

この家に越してきたときに、家の裏の森は茂りすぎていたのでかなりの本数の木を切らなければいけなかった。切った木は樵さんがうちの薪ストーブの大きさに合わせてぶつ切り丸太にしてくださった。それを自分で割って薪にする。が、節があったりして割れないものもある。そういう割れないぶつ切り丸太は薪小屋の外に積んであった。

絶対にストーブにははいらない太さのものもあるけれど、なんとか無理やりなかに入りそうな大きさのものもある。そういうものをいくつか選んでストーブの隣に積んで乾かしていた。

薪を作っているとそれぞれの木の特徴が見えてきて面白い。節目の形、やわらかさ、重さ、割れやすさ…。樫やななかまどはとにかく重くて硬い。そして火がつきにくいけれど、一旦火がつくと燃えつきるのにも時間がかかる。杉や松はやわらかく軽く燃えやすい。桜は樹皮が燃えるときに独特の芳香を放つ。

先日、息子が来ていたとき、昼間は暖かかったのに夜になると冷え込みがきつかったので薪ストーブをつけていた。それでも冬とは違い盛大に燃えさせると暑くなりすぎるので、ダンパーを少しだけ開けていた。中の薪が完全に熾き火になったときに思いついて直径が20cmくらいあるぶつ切り丸太を入れてみた。樹皮と重さと年輪からななかまどだとわかった。

パズルのようにああでもないこうでもない、この向きならこちらから突っ込めば、と試行錯誤してなんとか薪ストーブの中に入れることができた。燃えはじめたななかまどはその後3時間以上も部屋を温め続けていた。

ななかまどは七度かまどに入れても燃え尽きない、という俗説があるらしい。ゆっくりと燃えている薪ストーブの中のななかまどを見ながら、その俗説は正しいのではないか、と考えていた。