最後の追い込み
一条ゆかりの「プライド」でマレーネは「風邪もひかない。おなかも痛くならない。事故にも気を付ける。人がくれたものは食べない」とコンクールに挑む心得を話しつつ、サンドイッチをぱくついていた。そして、「だから奇跡は起こらない」とライバルの史緒を牽制していた。
わたしはコンクールに出るわけではないので、誰かがわたしを蹴落とそうとするわけではないけれど、やはり、試験の前はいろいろと注意をしたほうがいいだろう。その日のためにこの2年間、ひたすら勉強してきたんだから。
風邪もひかない。
おなかも痛くならない。
事故にも気を付ける。
生ものと貝は食べない。
そして、わたしにも奇跡はいらない。もうひたすら自分の知識を確かなものにしていくことだけ。知識の断片を集めていくと、初めは訳が分からないモザイク模様しか見えてこないけれど、一定の量を蓄積するときれいな3次元の地図が出来上がる。もうできている。その中をナビゲートしていく練習を重ねるだけだ。そして、長時間、その知識の集積の中をナビゲートする体力をつける。
そして、いろいろ終了したら、温かい海辺でお寿司食べるんだ。