小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

人間の可能性

3月26日にThe Advocate.comでLabor of Loveという記事を読みました。

以下、拙訳です。



Labor of Love

From the Advocate March 26, 2008
http://advocate.com/exclusive_detail_ektid52947.asp



Thomas Beatieさんが彼の妻との子供を妊娠したことについて、彼自身の経験と今の気持ちをThe Advocateに話してくださいました。


「わたし達のご近所さんたちにとってはわたしの妻ナンシーとわたしはまったく普通のカップルに見えていることと思います。わたし達が住んでいるこのオレゴンの静かなコミュニティーではわたしたちは見た目どおりの幸福で愛情に満ちたカップルであると思われていることでしょう。わたし達が一生懸命に働き、自分達の家を買い、そして子供を作ろうと思うことはまったく普通のことです。わたしが自分の子供を身ごもることに決めた以外は。

「わたしはトランスジェンダーで法的には男性であり、ナンシーとの結婚も合法的なものです。同性婚やドメスティック・パートナーシップ、シビル・ユニオンとは違い、ナンシーとわたしは結婚にかかわる1100もの連邦国が保障する権利を持っています。去勢は性転換に必要とされていないため、わたしは胸の整形手術と男性ホルモンセラピーを受けることにしましたが、生殖能力はそのままにしておきました。自分の遺伝子を受け継ぐ子供がほしいという願望は男性のものでも女性のものでもなく、人間の願望だからです。

「10年前、ナンシーとわたしが結婚したとき子供がほしいというのは計画というよりは単なる夢でした。わたしは常に子供がほしいと思っていました。しかし、ナンシーは20年前にひどい子宮内膜症を患ったため子宮摘出をしていて妊娠ができません。でも、わたし達の注文シルクプリントの事業がうまくいき始め、2年前にハワイからパシフィック・ノースウェストに移り住み、今が子供を作るチャンスだと思いました。わたしは二ヵ月ごとのテストステロン注射を中止しました。わたしの最後の月経は約8年前であり、注射をやめるという決定は簡単なものではありませんでした。注射をやめた4ヵ月後にわたしの体は自立的に機能をし始めたので、妊娠のためのエストロゲンプロゲステロン、または受胎のための薬の投与を受ける必要はありませんでした。

「わたし達のことで法的、政治的、社会的に未知数の部分に対する関心が高まるでしょう。わたし達のしていることを不快に思う人たちからの反対も受け始めています。医者はわたし達を差別し、自分達の信教を理由にわたし達に対して門戸を閉ざしました。医療関係者はわたしに男性として呼びかけることを拒否し、ナンシーをわたしの妻として認めようとしません。病院の受付係りはわたし達を笑いました。友達や家族からのサポートもありません―ナンシーのほとんどの親戚はわたしがトランスジェンダーであることさえ知らないのですから。

「妊娠しようとすることから始まり妊娠することにいたるすべてのプロセスはわたし達にとってチャレンジでした。はじめにわたし達が訪ねた医者は生殖内分泌学者でした。彼はわたし達のことでショックを受け、わたしに髭を剃るように言いました。300ドルをかけた面談のあとで、いやいやながらも彼はわたしに初期検査をしました。彼はそのあとで、クリニックの精神科医にわたし達が子供を生み育てるのにふさわしいかを判断してもらうために会うようにいい、わたし達のケースを病院内の倫理委員会にかけました。何千ドルかを費やし数ヶ月ののちに、彼はわたし達の治療を継続しないといいました。その理由は「わたしのような人」に治療行為をすることが不愉快だからというものでした。

「最終的には9人の医者から治療を受けました。そのため、冷凍精子バンクから匿名の提供精子を受け取るのに一年以上かかりました。そしてナンシーとわたしは最終的には自宅での精液注入をすることにしました。

「わたしの初めの妊娠では三つ子を子宮外妊娠しました。それはわたしの命にかかわる状況で手術による治療が必要となり、わたしはすべての胎児と右側の卵管を失いました。わたしの兄がこのことを聞いたとき、彼は「そのようになったのはよかったのだ。どんなモンスターが生まれてきたかわからないんだから」といいました。

「二度目の妊娠は正常で赤ちゃんは女の子で完全に健康であることをお伝えできることがとてもうれしいです。出産予定日は2008年の7月で、その日を指折り数えて待っています。

「妊娠している男ってどんな気持ちがするかですか? すごいですよ。自分のおなかが新しい命でどんどん大きくなっていること以外では、わたしは自分が男であることに疑いを持っていません。細かい話をすれば、わたしのジェンダーアイデンティティーは男のままですが、わたし自身の代理母になったような気持ちでいます。ナンシーにとってはわたしは彼女の子供を身ごもった夫です。こんなに愛情深く協力的な妻を持ててわたしはとても幸運です。わたしはわたしの娘の父親となりナンシーは母親となります。わたし達は家族なのです。

「この地域の医療現場の外においては、だれもわたしが5ヶ月の妊婦であるとは知りません。しかし、わたし達のしていることは究極的には人間の可能性の多様性を認めることを求め、なにが普通かという定義についての問いかけをするものだと思っています。」