小人閑居

世の中に貢献もせず害もなさず、常に出力50%。

カレーのバトン

どこかからかカレーの匂いがすると、ものすごくカレーを食べたくなる。帰り道、誰かの台所の窓から。町を歩いていてカレー屋さんから。給食のカレー、マンションの通路にこもるカレー。

そうしてカレーを作るわたし。

玉葱をみじん切りにしてガーリックと生姜とよく炒める。そこに真空調理をして冷凍ストックしてあった牛筋を入れる。トマトケチャップ、ナツメグベイリーフ、ワインは飲んじゃうから料理用酒。それからカレールー。黒胡椒。昼過ぎに作って夜までなじませておく。家じゅうでカレーの匂いがして食べたくなる誘惑と戦い続ける午後。

夕方、Kが帰ると連絡をしてきた。

そこで、夕飯前にもう一品。アンチョビをオイルごと鍋に入れてガーリックと生姜も入れて炒める。海老を入れて全体が焦げ付くくらいまで炒める。1㎝角に切ったじゃが芋、玉葱を入れてさらに炒めて、タマリンドが入ったインドのカレーペースト、コリアンダーシード、クミン、黒胡椒。食べる直前に1㎝角に切ったコルジェットを加えてさらに炒める。

牛筋カレーにも再度火を入れていく。

立ち上るカレーの匂いを換気扇が吸い込み外に吐き出す。

Kが帰ってきて、廊下一杯にカレーのいい匂いがしていたと笑う。きっと明日は誰かがまたカレーを作るはず。

そうやって、誰かがカレーを作って、そのカレーのバトンを受け取ってわたしがカレーを作って、また誰かがそのバトンを受け取ってカレーを作る。

カレーを作る楽しさは、そんな風につながっていく妄想にある…と思う。